知的財産セミナーで、ちょっと有名な“鉛筆特許”。
従来はね、断面が丸の鉛筆しかなかったんよ。
だから、テーブルの上をコロコロ転がってた。
コロン、と下に落ちて、中で芯が折れちゃってた。
だから、私は、断面が六角形の鉛筆を発明したんよ。
六角形の鉛筆は、ピタッと止まってくれる。
さらに、運搬するときも隙間なく詰まって、効率がいい。
さて、あなたなら、どのようにクレームを書く?
ってやつ。
クレームは、権利解釈の基本になるところです。
クレームの記載から特許権の範囲を解釈します。
権利範囲に入っていなければ、権利行使できません。
つまり、この範囲が広い方が、特許権としては強いことになります。
“鉛筆特許”では、長方形あたりでも、同じことがいえそうです。
また、転がり防止でよければ、多角形全般にいいですし、楕円のようなものでもいでしょう。
だから、クレームを「断面が六角形の鉛筆」って書いたら、断面が四角形のものは権利範囲から外れますし、転がり防止だけなら多角形や楕円みたいなのもカバーできなくなります。
だから、権利範囲の検討は重要なんですよ、と。
セミナーの講師は、そういうのを指摘して、「今日もちゃんと講義をしたもんね」という雰囲気にする。
そういう感じのものです。
この“鉛筆特許”に出会ったのは、確か、1998年。
この事例を作られた弁理士の先生から、直接、2人での会話の中で、説明いただきました。
学生だったのですが、特許の世界に興味があるということで、2人での食事会にご招待いただきました。夕方、事務所で、お仕事が終わられるのを待って、連れていってもらいました。
そのとき、会話の中で、議論させてもらったんです。
先生は、体調が悪くなられていて、食欲がなかったそうです。
だけど、私は貧乏学生。おごってもらえるということで、朝から何も食べず、その食事会に臨みました。
中華をがっつり食べさせていただき、先生が「いやぁ、君の食欲につられて食べれたよ。」とおっしゃってたのを思い出します。
その先生が、お亡くなりになって、数年たちます。
時間に余裕があるときなんかに、なんとなく、思い出すことが多くなってきました。
そのときは、先生から、
広いクレームにしようとして、例えば「位置エネルギーを変更する断面」などと表現する人がいるんだよね。
だけど、これって、原理そのものじゃない。特許のクレームになるんだろうかね。
とか、いろいろ聞かれました。
だけど、「へぇ、そういうものなんだ。」という感想しかなく、どちらかといえば食事に興味があった私は、議論の機会をのがしちゃいました。・・・もったいない。
今回は、今の私だったら、先生の問いかけに、どう答えるかな、という感じで、考えたものです。
1.“鉛筆特許”との出会い
2.最初の問いかけ
残念ながら、今の私は、「誰にとっても、いい特許」という存在を信じることができません。
最初に、発明者に尋ねるでしょう。
「これ、売れるの?」って。
少なくとも、私は、最近、鉛筆が転がって困るなぁ、とは感じません。
鉛筆を使う機会って、マークシート式の試験くらいでしょうか。
断面が丸の鉛筆って、色鉛筆が思い浮かびます。
だけど、いまだに、丸です。
断面を変えるには、何か、不都合があるんじゃないかなぁ、とかも思います。
“鉛筆特許”の説明では、マーケットのニーズが分からないんですね。
「技術として、いいものを発明した。だから、出願したい。」
技術者のエゴというか、そういうものを感じてしまいます。
使う人にとって、どうなんだろう、とか、そういうのまでを感じられないんです。
転がってた、といっても、最近は、鉄道なんかのテーブルにはペンを置くスペースがありますし、そういうニーズは本当にあるんだろうか、と、疑っちゃいます。
だけど、発明者って、本当は、そういう問題点を感じてるんですね。
私が質問すると、発明者は、きちんと答えてくれます。
その答えを聞いて、私は、おぉ、と、唸ることが多いです。
例えば、
本当は、転がるからダメなんだ、じゃない。
そういう形で、コミュニケーションが途切れる瞬間がある、とか。
発明者は、技術として説明してって言われたから、こういう書き方になっちゃったのかもしれません。
だから、今の私であれば、この説明では満足しないでしょう。
私は、この発明届出書から、発明者が、本当は何を考えて発明したかを知りたいと思うでしょう。
それを話すきっかけとなる質問として、「これ、どうやって売るんですか?」と軽くいって、発明者が、どういう場面にふさわしいと考えているかを問うと思います。
今の私であれば、そこを、クレーム作成のとっかかりとすると思います。
例えば、断面を円以外にもするのであれば、金太郎飴のように、断面に工夫するところが増えるように思います。そういうのも、考えてる可能性があります。
私は、発明者じゃありません。
新しいものは、つくりだせません。
だけど、発明者の想いを伝えてもらうことは、できそうに思います。
それを、受け止めて、整理して、みんなに広げることは、できそうに思います。
私は、自分から「いいクレーム」を作り出そうとはしないと思います。
発明者から、それを引き出したい、と思うでしょう。
そのために、考えて、質問すると思います。
・・・ セミナーの趣旨を外しちゃうでしょうけど、ね。




