3.特許請求の範囲の把握例 〜 具体例 〜

 今回は、具体的に事例を検討していきましょう。
 CS審査基準の事例2−5を参考にして、構成要件を把握してみます。


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 まず、請求項1ですが、私は、構成要件を2つと考えました。

(構成要件1−1)
  「コンピュータを利用したカードゲーム装置」(オレンジ)
(構成要件1−2)
  「複数枚のカードの組み合わせの中から抽出された役の種類に応じて異なる得点を求める得点算出手段」(ピンク)

 そして、相互関係は、
 構成要件1−1が、構成要件1−2を「有する」
というものです。

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 私は、請求項2では、構成要件を5つと考えました。

(構成要件2−1)
  「コンピュータを利用したカードゲーム装置」(オレンジ)
(構成要件2−2)
  「複数枚のカードの組み合わせに対して所定の役データが対応させられている役データテーブル」(ミドリ)
(構成要件2−3)
  「役データに対して得点データが対応させられている得点データテーブル」(アオ)
(構成要件2−4)
  「記憶手段」(キイロ)
(構成要件2−5)
  「選択された複数枚のカードの組み合わせを基に前記役データテーブルを検索して対応する役データを抽出し、該役データを基に前記得点データテーブルを検索して対応する得点データを抽出し、抽出された前記役データの全て及び前記得点データの合計得点を出力する手段」(ピンク)

 相互関係は、

  構成要件2−1が、構成要件2−4と構成要件2−5を「有する」、
  構成要件2−4が、構成要件2−2と構成要件2−3を「記憶する」、
  構成要件2−5が、
    構成要件2−2を検索して役データを抽出し、
    構成要件2−3を検索して得点データを抽出する、

というものです。


 構成要件1−1と構成要件1−2は、それぞれ、構成要件2−1と構成要件2−5に対応します。そのため、これらは同じ色で表現しています。

 このように、特許請求の範囲の構造を把握した上で、次回から明細書を読んでいきます。


<上級編>

・「コンピュータを利用したカードゲーム装置」
 コンピュータとカードゲーム装置を別の構成要件と考えることもできます。

 しかし、コンピュータ・ソフトウエアの技術分野の特許審査等では、一般的に、「データ処理作業はコンピューター・プログラム手段により、又は特殊回路手段により実行される」などと考えられています(PCT国際調査及び予備審査ガイドライン(日本語仮訳)A9.15[1][2]参照)。

 そのため、この技術分野では「コンピュータを用いる」というのは重要な違いとはならないと考え、まとめて検討しました。


・「記憶手段」
 ハードウエア側からのアプローチ(コンピュータ・ソフトウエア関連発明の改訂審査基準に関するQ&A 問8参照)として考えると、メモリなどのハードウエア資源からアプローチした場合には、「記憶手段」が構成要件であり、役データテーブルや得点データテーブルは、記憶手段に記憶される情報(データ)であって、独立の構成要件とすべきではないとも考えられます。

 しかし、CS審査基準の事例2−1請求項4では、「二乗テーブル・・・を備え・・・る計算装置。」と記載されています。本事例でも、テーブルを直接有する記載で特定してもよいように思われます。にもかかわらず、事例2−4では、わざわざ「記憶手段」という表現を使っています。請求項の記載としては特徴的なものです。

 また、構成要件2−5の手段の処理との相互関係でも、役データテーブルと得点データテーブルは、独立の構成要件として捉えたほうが分かりやすいように思われました。

 そのため、上記のような、分けた形で、構成要件を把握しています。